ATESTEOトルク計 使用方法と選択方法

1.一体型と分離型

一体型トルク計の概観写真。コンパクトで取り扱いが容易。一体型(~iS)は一つに纏まってコンパクトであり、扱いやすい長所があります。
分離型トルク計の概観写真。回転部周りのスペースが狭い場合や隣接した二軸のトルク計測に最適な構造。分離型(~eS)は二軸が接近している場合や軸周りのスペースが狭い場合に便利です。(ケーブル長:1.5m)

2.トルク計の選び方

・定格トルクにより機種が決まります。
・「トルク計機種/定格トルク対応表」で、ご希望の定格トルクの列から選びます。

トルク計/Nm 1 5 10 20 50 100 200 500 1k 1.5k 2k 3k 5k 7k 10k 15k 20k
RT1eSB
RT1eS
FLFM1iS/eS
F0iS/eS
TiSZ50
SiSZ50
F1iS/eS
F2iS/eS

・列に複数の機種がある場合、大きさや特徴で選びます。
ー例えば、500Nmでは5行に〇印がありますが、TiSZ50とSiSZ50は貫通穴用です。
通常用途では小容量はF0iS/eS-SV(薄型)かFLFM1iS/eS、中容量はF1iS/eS、大容量はF2iS/F2eSです。
お迷いの場合はご遠慮なく、お問い合わせください。

3.トルク計コネクタピン接続

  1. 12ピンコネクタ(周波数、電源、ゼロリセット)
ピン 名称 信号線 接続方法
1 N+ 速度周波数(誘導式 ) 高速インタフェースRS422入力との接続方法
トルク計の周波数出力を高速インタフェースで受けて、ロガーやPLCに接続するときの結線方法。
2 N- 速度周波数(誘導式 )
3 N2+ 速度周波数(磁気式/光学式)
4 N2- 速度周波数(磁気式/光学式)
5 N1+ 速度周波数(磁気式/光学式)
6 N1- 速度周波数(磁気式/光学式)
7 Mdf1- トルク周波数
8 Mdf1+ トルク周波数
9 コントロール ゼロリセット/診断 +24Vを5秒印加でリセット。
10 VCC 24V DC電源 電源接続方法
・VCC24V     ← 安定化電源+24V(注)0.5mm2線を使用。
・GND(11と12)← 安定化電源GND (上図参照)
11 GND (24V) 電源/信号線GND
12 GND (24V) 電源/信号線GND

2. 16ピンコネクタ(RS232、CAN、アナログ、監視)

ピン 名称 信号線 接続方法
1 TXD RS232の送信データ TXD/RXDとGNDをRS232/USBアダプタ経由でPCと接続。
トルク計の設定、トラブルシュートに使用。(上図参照)
2 RXD RS232の受信データ
3 GND 信号GND (注)3ピン、4ピン、12ピンは内部接続の
共通グランド
RS232やCANのGNDなど任意に使用可能。
4 GND
5 CAN_H CAN信号線 H側 トルク計のCAN出力とロガーCANモジュール間の結線図。
6 CAN_L CAN信号線 L側
7 Md Iout トルク値の電流出力 IoutとGND間でトルク値を電流出力
8 アナログ B 速度値出力用(トルクも可能) トルク計のアナログ出力とロガー/PLCのアナログモジュール入力間の結線図。
9 アナログ C ステータス出力用(エラー等)
10 アナログ A トルク値出力用
11 アラーム Md トルク設定値越え警告 アラームMd/N/IRとGND間で使用。
トルク、速度、赤外線アラームのオープンコレクタ出力。
12 GND 信号GND
13 アラーム N 回転速度設定値越え警告
14 アラーム IR 赤外線出力の低下警告
15 アラームリセット アラーム Md/N/IRを解除 +24V印加でアラームリセット。
16 NC/DT2 レンジ切り替え(デュアル) 0V印加で高レンジ、+24Vで低レンジ。

 

4.電源について

トルク計は24VDC電圧で動作し電源オン時に約1Aの電流が流れますので、十分余裕ある定電圧電源をお使いください。構内やベンチのAC電源への接続に際してはノイズ発生源となる機器(ダイナモやインバータ等)と別の電源から供給し、ノイズの回り込みを防ぐことが重要です。

5.出力の選び方

ATESTEOトルク計は周波数、アナログ電圧/電流、CANの三つの出力を同時に使用できます。
トルク計の周波数出力/アナログ出力/CAN出力の性能比較表。
(注)高速インタフェースのCAN出力は200μSサンプルで高速です。

  1. 周波数出力
    ロータ(回転部)のトルク信号をバッファで受けて直接出力します。高精度かつ高速、RS422ディジタル出力で電磁ノイズに強く長距離(20m以上)の伝送も可能です。ただし、データロガーやPLCに接続するには高速インタフェース(HC-1)が必要です。トルク計のアナログ出力に比べサンプルレートが1mS→200μS精度が0.1%→0.03%/0.05%に向上。電動化ノイズが多い環境ではCANか周波数出力がお勧めです。
    周波数出力の信号波形の図解。

  2. アナログ出力
    定格トルクをフルスケール±10Vの電圧(デフォルト)で出力します。ノイズの少ない環境で短距離接続する場合に向いています。アナログ電圧出力はデータロガーやPLCのモジュールに直結できて使い易いです。アナログ値サンプルレートは1mSです。
    アナログ出力の電圧波形の例。
  3. CAN入出力
    自動車用CANインタフェースを用いたデータ伝送です。エラー検出と再送機能で電磁ノイズに強いデータ伝送が行えます。最近ではロガーやPLCにCANモジュールがサポートされる傾向にあります。サンプルレートは最高1mSですが、受け側の機器の能力で抑えられる場合があります。周波数出力と同等の0.03%/0.05%と高精度であり、双方向通信でトルクのゼロリセットや監視もできます。
    CANインタフェースのディジタル信号パケットの構成。

6.設定と保守

トルク計の設定やトラブルシュートはPC上で動作するTCUConfigソフトで行います。このソフトにはトルクのゼロ点リセットやオーバトルクの監視機能もあります。トルク計はRS232入出力を使用しますので、PC接続には市販のRS232/USBアダプタを使用します。RS232コネクタはトルク計に付属していて、アダプタとの配線はTxDとRxDをテレコ(入れ違い)にする必要があります。

PC画面によるトルク計設定・保守ツール(TCUConfig)使用方法の図解。

1.設定機能
・アナログ電圧・電流レンジ
・トルクと速度のフィルタ
・最高/最低トルク アラーム
・最高/最低速度 アラーム
・CAN関連とフレーム転送レート

2.制御機能
・ゼロトルクのリセット
・アラームのリセット
・アナログ定電圧出力(-10~+10V)
・一定周波数出力
・デュアルレンジ切り替え
3.保守機能
・トルク/速度表示
・周波数表示
・ロータ読出し(定格トルク/感度)
・赤外線レベル表示
・ステータ内電圧/温度表示
・アラーム(赤外線/トルク/速度)
・ステータ/ロータ間ループ試験

7.トルク計の監視と制御

  1. TCUConfigを使用する方法
    トルクのゼロ点リセットなどの制御やオーバトルクの監視を上述のようにTCUConfigで行うことができ、大画面ディスプレイで監視を行う方法です。利点は接続が容易なことです。ただし、この方法ではトルク値や回転速度がオーバした場合に画面上に赤で表示され(上図参照)、パトライトなどで注意を喚起することは出来ません。
  2. 制御入力とアラーム出力を使用する方法
    トルクのゼロ点リセットなどの制御やオーバトルクの監視などをハードウェアで行う方法です。トルク計入力はアナログ電圧印可、出力はトランジスタのオープンコレクタで行ないます。操作卓のスイッチによる制御、パトライトによる警告、異常時の停止で使用します。

トルク計のアラーム信号でパトライト等による警告を発する方法の図解。

8.トルク計の接続ケーブル

  1. 12芯と16芯ケーブル
    トルク計にはケーブル自作用に12ピンと16ピンのコネクタが付属しています。また、オプションとして12芯と16芯ケーブル(10mまたは20m)をご購入できます。この場合はコネクタが付属されません。
  2. 使用例
    ・周波数出力でデータ収集、PCとRS232接続しTCUConfigで監視と制御を行う場合
    (12ピン:電源と周波数出力を配線、16ピン:RS232を使用しTxD、RxD、GNDの3本を配線)

    ・アナログ出力でデータ収集、PCとRS232接続しTCUConfigで診断、ハードで制御と監視を行う場合
    (12ピン:電源とコントロール信号。16ピン:RS232、各種アラーム、アラームリセットを配線。)

    ・CANでデータ収集、PCとRS232接続しTCUConfigで制御と監視を行う場合
    (12ピン:電源、VCC、GND、GNDの3本を配線。16ピン:RS232信号とCAN信号を配線)
  3. ケーブル配線
    ・コネクタは半田付け配線用になっています。

9.速度計測オプションのエンコーダの選び方

  1. FLFM1iS/eS、F0iS/eS-SV
    ・速度計測には光学式エンコーダが必要です。14,000rpmまでの計測は360pprまたは400pprとなります。
    ・20,000rpmまで速度計測するには光学式エンコーダ240pprが必要です。
    ・粉塵が多い環境でスリット目詰まりの保守を避けるには、30ppr誘導式歯車エンコーダが適しています。
  2. F1iS/F1eS
    ・標準で60ppr誘導式歯車エンコーダを装備し、20,000rpmまでの速度計測が可能です。
    ・解像度を高めるには磁気式エンコーダ1,000pprを使用し、9,000rpmまでの速度計測が可能です。
    ・さらに高速な14,000rpmまでの速度計測には360ppr光学式速度エンコーダが必要です。
  3. F2iS/F2eS
    ・標準で120ppr誘導式歯車エンコーダを装備し、12,500rpmまでの速度計測が可能です。
    ・解像度を高めるには磁気式エンコーダ1,448pprを使用し、6,500rpmまでの速度計測が可能です。

(注)誘導式歯車エンコーダには回転方向の検出機能がありません。他の機種に関してはご相談ください。

10.デュアルレンジについて

・大小の定格トルクを精度よく計測するためのオプションであり、最大1:5の定格トルクを選べます。
・レンジ切り替えは、コネクタピンへの電圧印可、PC上のTCUConfigメニュー、CANコマンドで行います。
デュアルレンジ トルク計の高低レンジを切り替える方法。電圧印可、PC操作、CANコマンドの具体的説明。

11.ロータ材質のSUSとチタンについて

  1. SUS製ロータ
    ・チタンに比べステンレスの材料費が低くコストパフォーマンスが良いため一般に使用されています。
    ・限界トルクが定格トルクの500%とチタン製に比べ堅牢です。
  2. チタン製ロータ
    ・SUS製に比べ高価ですが、軽量(FLFM11iS/eS-100Nmロータの重量はSUS製の60%)で低慣性です。
    ・限界トルクは定格トルクの350%となります。
    ・回転軸の軽量化や急激なトルク変動の計測に有効です。

疑問点が御座いましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。